「05 毎日の食生活を見直しましょう」で、肥満になるとお腹の脂肪が胃を圧迫して腹圧が高くなり、胃酸の逆流が起こりやすくなるとお伝えしました。肥満対策に加えて、生活の中でできるだけ腹圧をかけないようにすることが、胃酸の逆流を予防します。腹圧をかけない生活習慣について紹介します。
前かがみの姿勢をできるだけ避ける
前かがみの姿勢が習慣になっていると腹圧が高くなり、胃酸の逆流が起こりやすくなります。テレビを見たりパソコン作業をしたりするとき、前かがみになっていないか自分の姿をチェックする習慣をつけましょう。
また、草むしりやアイロンがけなど前かがみになる作業は、食後はできるだけ避けます。そして、こまめに上体を起こすことを意識し、長時間前かがみ姿勢を取り続けないようにします。
骨粗しょう症になると徐々に背骨の変形が進んで背中が丸くなり、前かがみ状態になることで胃が圧迫されます。背骨の変形が進まないように、早期に治療を行うことが重要です。
お腹を締めつけない服に
おなか周りを締めつけると腹圧が上がり、胃酸が逆流しやすくなります。きついベルト、着物の帯、ガードル・コルセットなどは避け、お腹を締めつけない服を選びましょう。
ウエストが総ゴムのズボンやスカートは一見楽そうですが、ゴムがきつすぎるとおなかを締めつけることになるので、ゴムの強さを確認してください。
腰痛の治療や予防で腰痛ベルト・コルセットを整形外科で処方された場合は、逆流性食道炎があることを主治医に伝えて、使用方法を相談します。市販の腰痛ベルトを使う場合は、食後は緩めるもしくは外すなどの工夫をしましょう。
おなかに力が入る動作をできるだけ避ける
重いものを持ち上げたり、息をつめておなかに力を入れる動作をしたりすると、強い腹圧がかかって胃酸の逆流が起こることがあります。カラオケなどで大きな声を出すのも要注意です。これらの動作は特に食後は避けるようにしてください。
また、便秘でいきむと強い腹圧がかかるため、逆流性食道炎のある人は便秘にならないように予防することも大切です。
①「朝食→トイレ」を習慣にして排便リズムを整えます
②食物繊維が豊富な料理を食べるようにします
③便意は我慢せず、すぐにトイレへ
④体を動かして筋力の低下を防ぎます
⑤腸内環境を整えるのに役立つ発酵食品を積極的にとりましょう
寝るときの姿勢にもコツがあります
逆流性食道炎の症状が重い人は、就寝中も胃酸の逆流が起こることがあります。そのため頭側を少し高くして、上体をやや起こした姿勢で寝ることが推奨されています。枕を高くすると頭だけが上がり、上体は水平のままになってしまいます。敷布団やマットレスの頭側に座布団などを挟み、上体が上がるように調整してください。
胃は体の左側に膨らんだ形をしているので、左側を下にしたほうが胃液をためることができ、胃酸が逆流しにくくなります。横向きで寝るときは、左側を下にしてください。体の右側を下にすると食道と胃の境目が緩みやすくなり、胃酸が逆流しやすくなるといわれています。
<参考> 日本消化器病学会編集「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2015」(南江堂)
<参考> 三輪洋人監修「シニアの逆流性食道炎:こみ上げる胃酸にもう悩まない! (別冊NHKきょうの健康)」(NHK出版)
文/東 裕美