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2020.8.7 更新

減塩を手軽においしく。調理と食べ方のくふう

慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

木内謙一郎先生

減塩の食事は「おいしくない」「むずかしい」という声も多くあります。無理なくおいしく減塩の食事を続けるためには何をしたらよいのでしょうか?

「薄味」にすればよいわけではありません

「減塩」でまっさきに思い浮かぶのは、料理の味付けを「薄味」にすることかもしれません。

薄味にすればもちろん減塩になりますが、たくさん食べてしまったら減塩にはなりません。逆に濃い味付けのものでも食べる量を減らせば、摂取量を抑えることができます。

また、濃い味付けに慣れている人が突然薄味のものを食べると、おいしく感じられなかったり、満足感が得られなかったりすることもあるでしょう。

このように、減塩の食事とは、ただ単純に味を薄くするわけではないのです。

減塩の食事の調理のコツ

減塩の食事は、調理や食べ方を少しくふうすることでおいしく続けることができれます。いろいろな料理に応用できる調理のポイントからご紹介します。

●酸味をきかせる
「酸味」には、塩味を引き立てる働きがあります。味付けにお酢やレモンなどの柑橘類を使うと、少ない塩分でも味が際立ち、おいしく感じられます。

●香辛料をきかせる
カレー粉やこしょう、山椒などの香辛料は、辛みや独特な風味があり、料理の味を深めます。薄味でも満足感を得ることができます。

●香味野菜を使う
ねぎやしょうが、にんにくなどの香味野菜や、パセリやタイムなどのハーブを、料理に取り入れてみましょう。特有の香りで料理のおいしさを引き立てます。

●だしや食材のうまみを塩分代わりに
昆布や煮干しなどでとるだしは、調味料代わりになります。また、トマトやきのこなどの食材はうまみがつよく、減塩の食事の必需品です。

●新鮮な食材を使う
新鮮な食材や旬の食材は、素材そのもののうまみや風味が強いため、料理にメリハリがつきます。味が薄くても満足感が得られやすいです。

●香ばしさで物足りなさをカバー
野菜や肉、魚を、グリルや網で焼き、焼き目をつけていただくのもおすすめです。焼き目の香ばしさによって、薄味のもの足りなさをカバーできます。

●加工食品は使う量に気をつけて
ハムやベーコン、ザーサイや梅干しなどの加工食品は、意外と塩分を含んでいます。食べる量には気をつけましょう。

食べるときにもできる減塩のくふう

食事の塩分を控えるためには、食べ方にもくふうできるポイントがあります。

●卓上でしょうゆや塩を使わない
野菜や漬け物、豆腐、焼き魚を食べるときに、食卓でしょうゆをかけると、塩分の摂りすぎにつながります。かけすぎにつながりますし、かけた分を把握することもできません。味付けは調理のときにするのが鉄則です。また、トンカツを食べるときはソースやしょうゆをかけるのが通常ですが、「かける」よりも「つける」ことを意識すると塩分の摂取量を調整できます。

●みそ汁は1日1杯に。具だくさんにして汁を減らす
みそ汁は1杯で塩分は約1.5g。日本の食卓の定番ですが、1日1杯と目安とするのがよいでしょう。また、野菜や豆腐などの具を多くして、汁を減らすことで、塩分を抑えられます。小さいお椀を使うのもおすすめです。

●薄味と濃い味のメリハリをつける
ねぎやしょうが、にんにくなどの香味野菜や、パセリやタイムなどのハーブを、料理に取り入れてみましょう。特有の香りで料理のおいしさを引き立てます。

●外食は塩分量が見えないのでほどほどに
自分で料理をすれば塩分の量を把握しやすいですが、外食ではそうはいきません。塩分量がわかりにくいので、外食の回数はほどほどに。自炊の食事とうまく組み合わせて食べましょう。外食時、「ラーメンは汁を飲み干さない」「卓上でしょうゆを使わない」などを決めておくと、塩分の摂りすぎを避けられます。

●食品の成分表示をチェック
調味料や加工品などの食料品には、パッケージに栄養成分が記載されています。塩分は「食塩相当量」として表示されているので、購入時に確認することがおすすめです。

減塩の食事は毎日続けていくことが大切です。がんばりすぎず、できるところからチャレンジしていきましょう。

<参考>日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」

<参考>文部科学省「日本食品成分表2015年版(第七訂)」

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文/おいしい健康編集部

慶應義塾大学医学部
内科学教室 腎臓内分泌代謝内科
木内謙一郎先生

慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科助教。2006年慶應義塾大学医学部卒業。11年慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。米国カリフォルニア大学アーバイン校医学部 Center for Epigenetics and Metabolism 博士研究員 (Paolo Sassone-Corsi研究室)を経て、慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 特任助教。20年4月より現職。

慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科 木内謙一郎先生

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