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2020.8.7 更新

適正体重を維持しましょう

慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科

木内謙一郎先生

血圧を上げる要因として、肥満かどうかも関係しています。

「肥満」とはどういう状態?

肥満とは、体内に脂肪が過剰に蓄積した状態のことです。肥満の診断には体脂肪量の測定が基準となりますが、一般的には体格指数(BMI)を用いています。

BMI(kg/m)=

体重(kg)÷身長(m)

BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数値で、日本では、18.5未満を「やせ」、18.5〜25未満を「普通体重」、BMI25以上を「肥満」と診断しています。

2018年度の「国民健康・栄養調査」では、「肥満」の割合は男性32.2%、女性21.9%であり、男性は特に30〜60歳代では30%以上にのぼります。女性の場合は、50歳台で19%、60歳台で27.5%と上昇します。※1

肥満と高血圧は関係があります

肥満や体重の増加は、高血圧を発症する危険因子であることがさまざまな研究からわかっています。

肥満では、血圧調節に関わるホルモンであるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系や交感神経が亢進(編集部注:活発になる・過剰になる)することが報告されています。また、肥満の人はすい臓から分泌されるインスリンが多い傾向にあります。これらは、腎臓におけるナトリウムの再吸収の亢進や内皮障害の原因となり、血圧の上昇につながります。さらに、肥満では睡眠時無呼吸症候群(SAS)を合併することがあり、SASが交感神経の亢進やアルドステロンの上昇を介して血圧が上昇することも考えられます。

また肥満の人の多くは、過食によって塩分を摂りすぎている傾向にあります。塩分を摂りすぎることでさらに血圧が上昇するので、肥満とともに、食べすぎにも気をつけましょう。

適正体重の維持を心がけて

日本人の肥満者を対象とした研究では、体重の3%以上の減量によって、血圧を下げる有意な結果が期待できることがわかりました。※2

肥満の人は、減塩や運動などの生活習慣を見直し、減量や適正体重の維持が大切です。ただし、急激な減量はからだに負担がかかります。長期の計画をたてて、無理のない範囲で行いましょう。

また、内臓脂肪量にも気をつけなければいけません。
BMIが25以下で肥満でない人も、内臓脂肪が過剰に蓄積されている場合があります。肥満と同様に、生活習慣の改善や減量を行う必要があります。

*1 厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査」

*2 Muramoto A, et al. Three percent weight reduction is the minimum requirement to Improve Health Hazards in Obese and Overweight People in Japan. Obes Res Clin Pract.2014;8:e466-e475.PMID:25263836

<参考>日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」

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文/おいしい健康編集部

慶應義塾大学医学部
内科学教室 腎臓内分泌代謝内科
木内謙一郎先生

慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科助教。2006年慶應義塾大学医学部卒業。11年慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。米国カリフォルニア大学アーバイン校医学部 Center for Epigenetics and Metabolism 博士研究員 (Paolo Sassone-Corsi研究室)を経て、慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 特任助教。20年4月より現職。

慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科 木内謙一郎先生

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