「血圧を下げる薬を飲んでいると、グレープフルーツジュースを飲んではいけない」という話をきいたことはありませんか。
そのように言われている理由や、グレープフルーツジュースの影響を受けやすい薬の種類などについて解説します。
「少しの量だったり、間隔をあけたら飲んでも大丈夫なのでは?」「グレープフルーツの実や、他の柑橘類は食べられますか?」といった、素朴な疑問にもお答えします。
なぜグレープフルーツジュースを一緒に飲んではいけないのですか?
高血圧の薬にはさまざまな種類があり、このうちグレープフルーツジュースと一緒に飲んではいけないとされるのは、「カルシウム拮抗薬」と呼ばれるグループの薬です。
カルシウム拮抗薬は主に、血管を広げて血圧を下げる働きをします。
この薬を服用している人がグレープフルーツジュースを飲むと、薬の効果が強く出すぎたり、心拍数が上がったり、頭痛などの副作用が起こりやすくなることがあります。
これは、グレープフルーツジュースに含まれている「フラノクマリン類」などの成分が小腸で、薬が代謝される酵素を阻害するためです。
その結果、体に吸収される薬の量が増えて、薬の血中濃度が上昇し、必要以上に血圧が下がりすぎてしまいます。
グレープフルーツジュースの影響を受けにくい薬もあります
カルシウム拮抗薬の中にもいろいろな種類があり、グレープフルーツジュースの影響を受けやすい薬と、影響を受けにくい薬があります(表)。
グレープフルーツジュースが好きで飲み続けたい方は、カルシウム拮抗薬を避けたほうが良く、かかりつけの医師・薬剤師に「グレープフルーツジュースの影響を受けにくい薬にかえられませんか?」と聞いてみるのも一つの方法です。
表 グレープフルーツジュースが各カルシウム拮抗薬に与える影響
【影響の強さ:かなり強い】
ニソルジピン、フェロジピン
【影響の強さ:強い】
アゼルニジピン、マニジピン、シルニジピン、ニトレンジピン、ニフェジピン
【影響の強さ:やや強い】
ニカルジピン、ベニジピン、ベラパミル
【影響の強さ:弱い】
アムロジピン、ジルチアゼム
【影響の強さ:不明】
アラニジピン、ニルバジピン、バルニジピン
少しの量なら飲んでも大丈夫ですか?
わずかな量のグレープフルーツジュースなら、カルシウム拮抗薬に影響しないのでしょうか。
実は、どのくらいの量までならグレープフルーツジュースを一緒に飲んでも安全かどうかは、はっきりしていません。
グレープフルーツジュースを200mL(コップ一杯)程度飲んだところ、薬の効果が強まってしまったという報告はあります。
しかし、飲んでも大丈夫な量については、グレープフルーツの品種によってフラノクマリン類の量が違うこともあり、現時点では十分なデータがありません。
グレープフルーツジュースがどのくらい薬に影響するかは個人差が大きいので、気になる方は、かかりつけの医師・薬剤師に相談しましょう。
時間をあければ飲んでも大丈夫ですか?
グレープフルーツジュースと薬を一緒に飲むのが問題なら、時間をあければグレープフルーツジュースを飲んでも大丈夫なように思えます。
しかし、グレープフルーツジュースによる影響は飲んだ日だけではなく、2〜3日続く場合があると言われています。
ですから、飲み合わせが悪い薬を服用している間は、グレープフルーツジュースを飲むのは避けたほうがいいでしょう。
バレンシアオレンジやみかん、レモンなら食べられます
グレープフルーツの果肉や、グレープフルーツ以外の柑橘類は食べられるのか、気になるところですね。
フラノクマリン類は、グレープフルーツの果汁だけでなく、果肉や皮にも含まれていることがわかっています。ですから、ジュースだけではなく果肉そのものや、皮を使った加工品(マーマレードなど)にも注意が必要です。
さらには、グレープフルーツと文旦をかけ合わせた「スウィーティー」、グレープフルーツとスウィーティーをかけ合わせた「メロゴールド」の果汁にも、グレープフルーツと同じくらいのフラノクマリン類が含まれています。
グレープフルーツの仲間以外にも、八朔、ザボン(晩白柚、土佐文旦)などにはフラノクマリン類が多く含まれると考えられています。
反対に、同じ柑橘類でもバレンシアオレンジ、温州みかん、レモンは薬に影響する可能性は低いので、食べて構いません。果汁が1%も含まれていないグレープフルーツフレイバーの炭酸水や飴も避けなくて大丈夫です。
柑橘類の種類や、食品の表示を確認してから食べるようにしましょう。
<参考>
『医療・福祉介護者も知っておきたい 食と薬の相互作用』(幸書房)
『薬と食の相互作用(上巻)』(医薬ジャーナル社)
『今日の治療薬』(南江堂)
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 くすりQ&A
Web医事新報 柑橘類の摂取と薬剤服用の問題点は?
Sica DA. Interaction of grapefruit juice and calcium channel blockers. Am J Hypertens. 2006 Jul;19(7):768-73.
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文/おいしい健康編集部