もともと日本人女性は葉酸や鉄などのビタミン・ミネラルが不足しがちで、妊娠中や授乳中の女性の摂取量が十分とはいえないことがわかっています。葉酸や鉄はおなかの赤ちゃんの発育のためにも大切な栄養素なので、妊娠前から摂取する習慣を身につけておくといいでしょう。
妊娠前や初期に摂りたい「葉酸」
妊娠中に積極的に摂りたいビタミンの筆頭としてあげられるのが、葉酸。
葉酸は水溶性ビタミン。ビタミンB群の一種です。枝豆やブロッコリーなどに含まれています。
葉酸は、胎児の先天異常である神経管閉鎖障害(しんけいかんへいさしょうがい)の予防のため、妊娠前から十分に摂取していることが大切です(葉酸については、「05 葉酸の摂取で神経管閉鎖障害発症を予防」で詳しく紹介しています)。
妊娠前の18歳以上の女性の葉酸推奨摂取量は、1日240㎍。
妊娠を希望している女性や妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の女性は、神経管閉鎖障害のリスク低減のため、1日+400㎍の葉酸摂取が望まれています。(※1)
葉酸は熱に弱く水に溶けやすいため、調理中に失われやすいのが特徴。確実に葉酸を摂取するために、葉酸のサプリメントや葉酸が強化された食品を利用するのが望ましいです。このような食品以外のサプリメントや強化食品から摂取する葉酸のことを「狭義の葉酸」といいます。
また、妊娠中期・後期は+240㎍多めに摂取することが推奨されています。(※2)
厚生労働省公表「日本人の食事摂取基準」(2020年度版)を基においしい健康編集部が算出
注意:葉酸は、胎児の正常な発育に寄与する栄養素ですが、多量摂取により胎児の発育が良くなるものではありません。
(100gあたりの葉酸含有量)
●枝豆(ゆで) 260㎍
●グリーンアスパラガス(ゆで) 180㎍
●ほうれん草(ゆで) 110㎍
●春菊(ゆで) 100㎍
●いちご 90㎍
出典:文部科学省 日本食品標準成分表 2015年版(七訂)追補 2018年、小山裕子 他「サービングサイズ栄養素量 100 -食品成分順位表-」(第一出版)
妊娠前よりさらに多く摂取したい「鉄」
鉄は、酸素の運搬に欠かせないミネラル。妊娠中はおなかの赤ちゃんの成長やさい帯(へその緒)・胎盤中への鉄貯蔵に必要となるうえに、妊娠中は循環血液量が増加することでも鉄の需要が増えます。
そのため、妊娠前よりも多く鉄を摂取することがすすめられています。
鉄の推奨摂取量は、妊娠していない18〜49歳の女性・月経ありの場合が10.5mg、月経なしの場合が6.5mg。
妊娠初期は、妊娠前・月経なしの場合に+2.5mg、妊娠中期・後期は+9.5mg多く摂取することが推奨されています。(※2)
厚生労働省公表「日本人の食事摂取基準」(2020年度版)を基においしい健康編集部が算出
(100gあたりの鉄含有量)
●大根葉(ゆで) 2.2mg
●小松菜(ゆで) 2.1mg
●ほうれん草(ゆで) 0.9mg
●青梗菜(油炒め) 0.9mg
●そば(ゆで) 0.8mg
出典:文部科学省 日本食品標準成分表 2015年版(七訂)追補 2018年、小山裕子 他「サービングサイズ栄養素量 100 -食品成分順位表-」(第一出版)
ビタミン・ミネラル補給は野菜をたっぷり使った副菜で
野菜には、葉酸や鉄をはじめとしたビタミン・ミネラルが多く含まれています。
野菜をたっぷり使った副菜を用意して、ビタミン・ミネラルを摂る習慣をつけましょう。
葉酸はとくに妊娠の極初期から大事な栄養素なので、妊娠を意識したときから野菜をしっかり食べる習慣をつけることが理想です。
葉酸はサプリメントなどからも摂取できますが、食事から摂らなくてもいいわけではありません。サプリメントに頼るのではなく、野菜などの食事からバランスよく摂ることも大切です。
また、葉酸はサプリメントなどで過剰に摂りすぎると健康障害を引き起こす恐れがあるため、規定量を守る必要があります。詳しくは「05 葉酸の摂取で神経管閉鎖障害発症を予防」でも紹介しています。
妊娠中におすすめの副菜レシピ
※1 厚生労働省 2000年公表「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/usr/wadai/ninpuyousan.pdf
※2 厚生労働省公表「日本人の食事摂取基準(2020度版)
葉酸 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586563.pdf
鉄 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586568.pdf
<参考>厚生労働省公表「令和3年妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~」
<参考>「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」
文/渡辺有紀子
編集/おいしい健康編集部