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2021.10.4 更新

母乳育児中もバランスのいい食生活を

母子愛育会総合母子保健センター 所長

中林正雄先生

母乳育児を選択した場合、お母さんが食べたり飲んだりしたものの成分が母乳に移行することがあります。授乳中も妊娠中に引き続き栄養バランスのいい食事を心がけ、元気に育児ができるように3食しっかり食べましょう。

主食・主菜・副菜を用意してバランスよく食べましょう

授乳中は妊娠前よりも、エネルギー、たんぱく質、ビタミンA、ビタミンB₂、ナイアシン、ビタミンB₆、葉酸、ビタミンC、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、モリブデンをより多く摂取することが推奨されています。

妊娠中と同様に、主食・主菜・副菜を用意し、炭水化物、たんぱく質、ビタミン・ミネラルをバランスよく摂るように心がけましょう。

また、水分をこまめに摂ることも母乳分泌には大事です。水やノンカフェインのお茶をポットやタンブラーに用意し、すぐに飲めるように用意しておくといいでしょう。

1日の摂取エネルギー量が1週間以上にわたり1500kcal以下になると、母乳の分泌量が減るという報告があります。(※1)
お母さんの食事が母乳分泌の基盤となるので、心身を健康に保つためにも、母乳育児中は1日3食しっかり食事を摂りましょう。

産後は赤ちゃんのお世話があるぶん、ゆっくり食事をする時間がなくなります。家族に食事を用意してもらう、赤ちゃんのお世話をしてもらうなどして、きちんと自分の食事の時間を確保するようにしましょう。

母乳育児中の飲酒は控えましょう

お酒が好きな人にとっては、妊娠中に我慢していたお酒を、産後いつから飲み始められるのか気になるところです。

お母さんが飲酒すれば血中のアルコール濃度が上がり、その90~95%のアルコールが母乳に検出され、飲酒量の平均2.0±0.2%が赤ちゃんに移行するという報告があります。(※2)
アルコールは赤ちゃんの発達に影響を与えますので、飲酒は控えたほうがいいでしょう。(※3)

けれど、母乳育児を長く続けたい場合、お母さんはいつまで禁酒すべきなのでしょうか?

お酒は時間がたてば体内のアルコールが消失(分解)しますので、どうしても飲酒したい場合は、1日の授乳回数が減ってきたタイミングがいいでしょう。
授乳を十分に行った直後に飲酒し、次の授乳までしかるべきインターバルをおけば、赤ちゃんにアルコールの害が及ぶことはないと考えられます。

では、飲酒後どの程度のインターバルをおけば、母乳からアルコールが消失するのか、気になるところです。

血中のアルコール濃度のピークは30分~2時間後に訪れ、その後はほぼ直線的に下がり、いずれアルコールは消失(分解)します。その平均値は女性でおよそ1時間に6.5g程度です。(※4)

たとえば、ビール250mlを飲んだとしましょう。ビール250mlのアルコール量は10gですので、およそ2時間後にはアルコールが消失(分解)すると考えられます。

ただし、アルコールを分解する能力・消失するまでの時間には個人差があり、これはあくまで平均値の話です。
その日の体調や酔いやすさ、食事を摂りながら飲酒をするかによっても異なります。どうしても心配なときは、お酒を飲むのをやめておきましょう。

カフェインの摂りすぎには注意をしましょう

カフェインもアルコールと同様、お母さんが摂取すると母乳に移行します。
カフェインを摂りすぎると、赤ちゃんの不眠や興奮につながることがあります。

欧州食品安全機関(EFSA)によると、授乳中の女性は、1回あたりのカフェイン摂取200mg以下、習慣的なカフェイン摂取200mg/日以下であれば、健康リスクは生じないとしています。(※5)

出典/食品安全委員会「食品中のカフェイン」
コーヒー2〜3杯程度であれば健康リスクは生じないと考えられます。
チョコレートにもカフェインが含まれていますので、カフェイン濃度を意識して食べるようにしましょう。

ハーブティーには、授乳中は避けたほうがいいものもあります

水分補給のために、ノンカフェインのハーブティーを愛飲しているお母さんもいることでしょう。

ハーブティーの中には乳汁増加効果が謳われたものもありますが、多くは安全性が十分ではありません。

中にはセージ茶のように、母乳の分泌を減少させるものもあります。
心配な場合は、かかりつけ医や管理栄養士に相談してみましょう。

ヨウ素の過剰摂取が、赤ちゃんの甲状腺機能に影響

海藻に多く含まれているヨウ素。ヨウ素は母乳に移行するため、授乳中は妊娠前よりも多く摂取しなければなりません。

しかし、過剰摂取で母乳中のヨウ素濃度が極端に高くなりすぎると、赤ちゃんの甲状腺機能に影響を与える可能性があります。摂りすぎには注意しましょう。(※7)

とはいっても、海藻を意図的に避け続けると、逆にヨウ素不足になります。
どの栄養素でも同じことがいえますが、特定の食品ばかりを食べ続けたり、特定の食品を避け続けたりすると、栄養バランスが崩れてしまいます。
いろいろな食品を組み合わせ、バランスよく食べることが大切です。

※1 Mannel R, et al : Core Curriculum for Lactation Consultant Practice.2nd ed, Jones and Barlett, 2007.

※2 田中晴美:日本における母親の飲酒による子どもの異常の現状、日本医事新報、1995;3714:45-49、1995.

※3 厚生労働省公表「妊産婦のための食生活指針」

※4 厚生労働省e-ヘルスネット「アルコールの吸収と分解」

アルコールの吸収と分解

※5 食品安全委員会「食品中のカフェイン」
http://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf

※6 厚生労働省公表「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」

※7 厚生労働省公表「令和3年妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~」

<参考>厚生労働省公表「令和3年妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~」
https://www.mhlw.go.jp/content/000776926.pdf

<参考>厚生労働省e-ヘルスネット「飲酒のガイドライン」

飲酒のガイドライン

<参考>国立健康・栄養研「健康食品」の安全性・有効性情報
「妊娠中のハーブ製品*1の自己判断による摂取に注意して下さい 」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/usr/kiso/ninpu-herb/ninpu-herb-document.pdf

文/渡辺有紀子
編集/おいしい健康編集部

母子愛育会総合母子保健センター
所長
中林正雄先生

1968年千葉大学医学部卒業、東京女子医科大学教授を経て、2002年母子愛育会愛育病院 院長、2013年母子愛育会総合母子保健センター 所長。専門領域は周産期医学、母子保健。厚生労働科学研究などで、安全で安心なお産のための医療システム構築に取り組む。

母子愛育会総合母子保健センター 所長 中林正雄先生

医師の指導のもと栄養指導を受けている方は、必ずその指示・指導に従ってください。


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